外反母趾は、日本人の成人者の中で30%が罹患していると言われており、年々身近な存在となっている足の疾患の代表的なものの1つです。
そんな外反母趾になってしまっている人の中には、痛みを我慢しながら生活している人も多くいます。
しかし、外反母趾を放置しておくと、最悪の場合、足が変形し、歩行が困難となるため、手術をする必要が出てくることも。
とはいえ、正しい治療と普段からの対策で、健康な脚を手に入れることができます。
そこで当記事では、外反母趾に関する正しい知識を紹介し、健康な脚を手に入れるための対策を徹底解説していきます。
1.外反母趾とは?
外反母趾とは、足の親指が小指側に大きく変形してしまい、足の形がいわゆる「くの字」の形になってしまう状態を言います。
主な症状・特徴
外反母趾とはその名の通り、母趾は親指のことを指し、外反とは小指側に曲がってしまう状態を言います。
親指が小指側に曲げられることで、親指の付け根あたりの骨(中足骨)は反対側に押し出されるように曲がってしまいます。
これを内反と言います。
この内反と外反が同時に進行し、足は「くの字」の形に変形してしまい、外反母趾となっていきます。
つまり、親指は小指側に曲がり、親指の付け根あたりは捻れながら反対側に押し出されるように突出されていきます。
足が変形してしまうと、普段履いている靴であっても痛みを感じたりしてしまい、ストレスを感じることにつながります。
痛みを感じると、歩き方が無意識におかしくなってしまい、多くの場合は扁平足も併発しているという状態に陥ります。
扁平足は、足の裏の土踏まずと呼ばれるアーチ状が崩れ、平になってしまう状態を言います。
外反母趾を放置し、進行すると
外反母趾を放置すると、以下のような症状につながります。
魚の目・タコ
多くは足の裏の、人差し指や小指の付け根あたりに形成されます。
これは、親指が変形したことで、歩行時の蹴り出しで親指が機能しなくなった分、親指以外の負担が大きくなってしまうことが原因です。
足の裏にできることで痛みも感じやすく、よりストレスを感じる原因となります。
皮下滑液包炎 ひかかつえきほうえん (バニオン)
まず、滑液包は皮膚や筋肉、靭帯や骨などが擦れる部分に衝撃を吸収しようと発生する、液体で満たされた平な袋のようなものです。
外反母趾では、親指の内側あたりにできる突出部では、靴と擦れるために滑液包が生じやすくなります。
この滑液包は通常動かすと痛みを感じやすく、外反母趾における突出部は、親指まで繋がる神経が通っており、その神経が圧迫され、より一層、痺れや痛みを感じやすくなります。
脱臼
外反母趾を放置し、進行していくと、親指はさらに小指側に変形していき、人差し指、中指の下まで潜り込むようになっていきます。
親指が潜り込むということは、人差し指や中指は持ち上げられるということになります。
すると、指の付け根にある関節は、足の甲の方向に脱臼してしまうことになります。
また、親指は捻れながらくの字に曲がっていくので、歩行時や普段の生活の中で、体重などによる負荷が爪の側面にかかってしまい、巻き爪になることも考えられます。
2.意外とやってしまっている?外反母趾の原因とは
外反母趾は、ある日突然症状が出る、ある日突然痛みを生じる、というようなものではありません。
日々の生活の中での足への負担や習慣が積み重なって、外反母趾となります。
さらに、女性は男性の6~10倍もの患者がいる、40代から60代の女性の中では、4人に1人が外反母趾になっているとも言われています。
では、なぜ外反母趾になってしまうのでしょうか。
外反母趾の原因について解説していきます。
靴(外的要因)
最も大きな原因は「靴」です。
外反母趾になりやすい靴の特徴として次のようなものが挙げられます。
- つま先が細い靴
- かかとが高い靴
- 素材が硬い靴
これらの靴は全て足のつま先への負担が非常に大きく、ハイヒールのような靴は特に、かかとが高くなり、つま先が細くなった状態で圧迫され続けるため、外反母趾の原因になりやすくなります。
これが、外反母趾が女性に多い理由なのです。
また、外反母趾は突発的なものではなく、蓄積によるものなので、長年仕事なので、ヒールを履いていたという40代以上の方が多くなる理由もわかります。
また、上記のような靴以外にも、サイズや形が自分の足に合っていない靴を吐き続けることも、外反母趾の原因になります。
性別による身体の作り
上記のように男性よりも女性の方が多いということを紹介しました。
実際、女性の関節は、男性よりも柔らかく、筋力が低くできており、日々の生活習慣の中での積み重ねで、関節が変形しやすいのは事実です。
関節の変形
持病として、関節リウマチ変形性関節症を持っている方は外反母趾を併発しやすくなります。
この関節リウマチ変形性関節症も女性に多く、男性の5~6倍と言われています。
3.外反母趾の治療法
外反母趾は、足の変形が大きければ痛みが大きいというわけではなく、変形はあまり大きくなくても、強い痛みが生じることもあります。
そのため、少しでも痛みを感じるようであれば、治療をするべきです。
治療には、大きく分けて「3-1.保存療法」と「3-2.手術」の2種類があります。
3-1.保存療法
保存療法には、靴の指導、足の指の体操、装具療法の3種類があります。
まだ初期状態、症状が軽度、子供の場合は、保存療法での改善が充分に期待できます。
靴の指導
原因でも紹介した通り、外反母趾は日頃の積み重ねであり、靴が大きな原因となっています。
そのため、まずは自分の足に合った靴を履いて生活するところからです。
理想の靴の特徴は以下の通りです。
- かかとと足の甲がしっかり固定されている
- かかとが高くない
- つま先が細くなく、広々としている
- 足の指が靴の中で動かせるように、つま先には1~1.5cmほどの余裕を持たせておく
さまざまな事情でハイヒールを履かなければならない場合は、移動時は別の靴を履いて、ハイヒールの時間をできる限り減らしましょう。
ハイヒールでも、上記の理想を実現できるようなハイヒールがベストです。
足の指の体操
これは、日頃から隙間時間や何か作業している時でもできる体操です。
足の指をグー・パーと交互に動かすだけです。
パーの際に親指をしっかり開くことがコツです。
軽度の場合はこれだけでも充分な効果を発揮し、進行を止める効果も期待できます。
中等度以上の場合、関節が硬化し、この体操を行うのは難しいので、親指を掴んで、人差し指と反対の方向へ伸ばすようなストレッチを行いましょう。
力任せにするのではなく、優しく、関節を伸ばしていくことが大事です。
装具療法
ここまでの2つに加え、痛みが強い場合には、装具を利用します。
種類は多くありますが、代表的なものは、親指を開くために、親指と人差し指の間に挟み込むトースプレッダーや、それぞれの人の足の形に合わせて作成する中敷のようなものである足底挿板などがあります。
3-2.手術
保存療法では改善されない場合や、症状が進行してしまっている状態の場合は、手術による治療となります。
手術では、主に足の親指の付け根あたりにある中足骨と呼ばれる骨を切ります。
骨を切るため、手術後は骨が再びくっつくまでに4~6週間、完治までには3ヶ月ほどかかると言われています。
その間は、松葉杖等で生活することになります。
4.日頃からできる簡単外反母趾対策
外反母趾は、日頃の生活習慣の積み重ねで発症します。
そのため、外反母趾になった人も、まだなっていない人も、日頃の生活習慣の中での対策が重要です。
ここでは、日頃からできる対策を紹介していきます。
靴の見直し
普段履いている靴が本当に自分の足に合っているのかを再度チェックし、自分の足に最適な靴を履くことが最も重要です。
上記の保存療法で紹介した理想の靴を再度おさらいします。
- かかとと足の甲がしっかり固定されている
- かかとが高くない
- つま先が細くなく、広々としている
- 足の指が靴の中で動かせるように、つま先には1~1.5cmほどの余裕を持たせておく
これらの靴を日頃から履くことで、充分な外反母趾対策になるのです。
また、できるだけハイヒールを避けることが重要です。
どうしても避けられない場合は、移動時は別の靴を履き、ハイヒールを履いている時間を減らすことが重要です。
また、ハイヒールを履く際にも、足の甲のベルトは太めのものを選び、足の甲をしっかり固定すること、中敷などを入れて、足がハイヒールの中でつま先方向に滑らないようにするなど、工夫をして履くようにしましょう。
足の指の体操・ストレッチなど
体操の例として、
- タオルを床に敷いて、指の曲げ伸ばしで自分の体の方向にタオルを引き寄せる運動
- ゴムバンドを両足の親指にかけ、それぞれ反対方向に引っ張る運動
- 親指を掴み、小指と反対方向に外側に伸ばす運動
いずれも、座った状態でできるので、何か作業をしながら、テレビを見ながらでもできます。
5.まとめ
外反母趾は、ただ足の形が変形するだけではなく、関節への影響、また人間の生活では欠かせない「歩行」という行動にも大きな影響をもたらします。
また、他の足の問題も併発することもあります。
日頃からの対策の積み重ねが重要ですが、初期時点で治療することができれば、問題ありません。
そのため、少しでも痛みを感じたり、足の形に違和感を感じたりしたら放置せず迷わず病院、整形外科を受診しましょう。
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